子ども達もお年寄りも
みんなが集える駄菓子屋

あこう屋の物語り

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あこう屋の物語り

鞆で唯一の
駄菓子屋さん

子ども達が集まる場所

鞆の浦の関町と呼ばれる地域でのこと。

賑やかな声が聞こえたかと思うと、
数人の子ども達が、建物から飛び出してきた。
「おばちゃん、バイバーイ!」という子ども達に、
「車に気をつけるんよ~」と返す声が聞こえる。

見上げると、「あこう屋」という看板。
駄菓子屋のようだ。
子どもの頃、うちの近所にもこんな店があったなぁ。
そう思いながら入口から中を覗くと、「いらっしゃい!」
という元気な声に迎えられた。

店番をしていたのは、西村千賀子さんと武政美智子さん。
店長は西村さんで、武政さんは時々お手伝いに来るとのこと。

あこう屋は、基本的に西村さんの生活スタイルに合わせて
営まれているそうだ。営業時間も定休日も決まっていない。

「でもね、なるべく営業するようにしとるんよ。
ここは鞆で唯一の駄菓子屋。鞆中から子ども達が来て
くれるからね」

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あこう屋の物語り

お店番仲間の
おばあちゃん

実は介護施設のお年寄り

店内には、10~20円で買える駄菓子がずらりと並んでいる。
懐かしさもあって、つい見入っていると、
一人のおばあちゃんが店に入ってきて、西村さん達の
横に腰を下ろした。

西村さんが、こちらに向かってにっこり笑う。
「おばあちゃんも、一緒に店番するんよ」

何でもこの駄菓子屋は、
近所にある介護施設「さくらホーム」が、
子ども達とお年寄りとの交流を目的として
運営しているそうだ。

それで、さくらホームの利用者さんが時々ここに来て
「お店番」をしてくれるという。

西村さんは、実はボランティア店長。
店を切り盛りしながら、ここへ来る地域のお年寄りを
見守る役目も引き受けている。
自身の母親もさくらホームを利用しており、
介護が必要なお年寄りの支え方をよく知っているのだ。

「小さい子達とお年寄りが睦まじくしているのを見ると、
私らも元気になれるんよ」

西村さんも武政さんも、
異なる世代が交流する場にいることそのものを
楽しんでいるようだった。

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子どもと
お年寄りとのふれ合い

自然な多世代交流

あこう屋へは、色々な子ども達が来る。
小学生はもちろん、鞆こども園の園児達も先生と一緒に
お買い物の練習をしに来るそうだ。

壁に貼られているたくさんの紙切れを指さしながら、
「ここに来た子どもらに、名前を書いてもらってるんよ」
と西村さんは言う。
よく見ると、拙い字で名前や学年が書かれている。
こうすると子ども達の名前を覚えることができるし、
名前を呼べば、彼らも慕ってくれる。

西村さんによると、子ども達はとても自然に
お年寄りとも仲良くなるそうだ。
介護施設のお年寄りと子ども達が、駄菓子屋で仲良く
なるなんて、ちょっと驚きだ。

今ではさくらホームの利用者さんが、スタッフの方と一緒に町を
散歩していると、それを見つけた子ども達が、
「駄菓子屋のおばあちゃん!」と
駆け寄ってきてくれるとか。
お年寄りにとって、どんなにか嬉しいことだろう。

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あこう屋の物語り

ここは地域の
たまり場

みんなが集える場所

あこう屋は、地域の人の「たまり場」にもなっている。
色々な世代の人が気軽に立ち寄って、お茶を飲み、
おしゃべりをして帰っていく。

近所の人が作った雑貨や切り絵なども置いてある。
「欲しい人がいれば買ってもらうんよ」
と言う西村さん。
手作りのアクリル雑巾は人気商品のひとつだそう。

自分が趣味で作ったものが、他の人に買われていく。
そんなちょっとしたことが、日々の喜びとなる。
そして、地域の人同士がつながるきっかけにもなるだろう。

子どもも、大人も、介護の必要なお年寄りも、
そうでないお年寄りも、みんなが集える場所。
ここに来ることで、理解し合い、支え合うことができる。

あこう屋は、一見どこにでもありそうな駄菓子屋さんだけれど、
実は地域コミュニティにとって、とても大切な場所だった。

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あこう屋の物語り

受け継いでいく
大切なこと

子ども達の未来のために

また別の子ども達が走ってきて店の前で立ち止まり、
こちらに向かって手を振ってきた。
西村さん達も、笑顔で手を振り返す。

子ども達とふれ合う西村さん達やおばあちゃんは
本当に嬉しそうだ。
同時に、子ども達はかなり貴重な体験をしている
のではないかと思う。

あこう屋に来る子ども達にとって、日常の中に要介護の
お年寄りがいるのは、当たり前。
そして、身近にいる大人達は、そんなお年寄りを
地域ぐるみで支えている。

そういう光景を見てきた子ども達はどんな大人になるだろう?

当然のように、地域のつながりを大切にし、
お年寄り達を支えるようになるのではないだろうか。
それができる大人と、できない大人とでは、きっと
天と地ほどの差がある。

昔よく食べた駄菓子をひとつ買って、食べてみた。
懐かしい味のはずなのに、
今までに味わったことのない何かを感じた。

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Profile葦原なみ

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